「あ、佐山だっけ。よろしくな」
「よ、よろしく……」
霧雨さんが、轍の手を引く。
「轍も、自己紹介はまた後でしなよ。そろそろ移動しないと危険だから。他の奴らに教室を取られちゃ、隠れるところもないまま退場ってやつを喰らうことになるよ」
「でも、教室って言ったって……どこに隠れんだよ」
悠真が焦った顔で霧雨さんに尋ねた。
「波瀬くんは頭が悪いの?ここから一番近い教室か、空いている教室だけよ」
空いている……ということは、きっともうほとんどの教室が埋まっているということか。
「なんで近い教室なんだ?」
「ここまではまだグループが来ていない。三年生のクラス、三階はほぼ全教室が埋まってた。だから、近くの空いている所に早く隠れないといけないの」
「保健室か会議室……ぐらいか」
霧雨さんが頷いた。



