「じゃあ、後でね」 「うん。そっちも気を付けてね!」 後ろから最後に声がかかって、笑顔で一度振り向くと、私は目の前の角を曲がって廊下を走った。 すると、また、数人の生徒とすれ違う。 ふわふわとしたシャンプーの香りと、ぱっちりとした目───一瞬の間、隣で揺れたポニーテール。 「あれ?」と声が聞こえて、私もそのうちの一人の生徒も、足を止めた。 「夏仍……なの?」 ───この、声。 急に目に涙が溜まりだして、私は制服の袖の辺りに目を擦り付けた。 「……ゆ、ずき?」