「ただいま……っ」
その瞬間、私は感情を抑えきれなくなって、お母さんに抱きついた。
「……分かんないよぉ、もう……っ」
お母さんはただ、私の言葉を聞いて、小さく頷いた。
「お母さんっ……なんでっ、私に嘘なんかついた、の……?」
お母さんは私の頭に手をのせて、優しく撫でる。
いつもより、冷たい手だった。
「……お母さんとお父さんはね、元々は仲良しだったの。でもね、夏仍が産まれてから、私は……びょうきにかかっちゃったの」
私が産まれてから……って、
───私を産んだから……?
「じゃあ、私が産まれなかったら、……お母さんは幸せだった……?」
私が聞くと、お母さんは微笑む。



