「お母さん?」
呼んでみても返事がない。
部屋に足を踏み入れると、そこには、リビングのソファーの前に寝転んでいるお母さんがいた。
寝てたんだ。……疲れてるのかな?
でも、何だか様子がおかしい。
……目は開いてる。小声で、何か言ってる。手には、赤い毛糸の切れ端。
───毛糸の、きれはし?
「お母さん?……お母ーさん!」
「……つ、よ。……な、つよ?」
お母さんの目からは、涙が溢れている。
紐は明らかに手に……両手に、握られている。……何しようと、してたの?
「お母さん……どうしたの?」
私が聞くと、お母さんは優しく笑った。



