「本当に、夏仍はやさしいわね」
前髪を、そっと、お母さんの手がかき分ける。太陽を背にしても、お母さんはずっときれいだった。
「それ、柚希のお母さんにも言われたよぉ?」
やさしい?
この私の、どこが優しいのかなぁ?
お母さんは、私の体を抱きしめる。
「そうなの?ふふっ。お母さん、やさしい子は大好きよ」
「じゃあ、お母さんの鞄も持ってあげる!私は力持ちだから!」
そう言って私が鞄を取ろうとしたとき、お母さんの顔が目の前にきて、桜のような薄ピンク色の唇が、動いた。
「……そっかぁ。じゃあ、お母さんが今から言うこと、聞いてくれる?」
「うん、いいよぉっ!」



