「……十一番、さやまなつよちゃん」 「はいっ!」 よぉし。 お母さんが私を見て、カメラを向けながら、嬉しそうに笑っていた。 ─────── 「はぁぁ、重たぁい……」 ドシャッ、ドシャッ。 足取りは重く、せっかく貰った防犯ブザーは、胸元にあるポケットに入れるはめになる。 入学式だからって、なにもこんなに教科書とかをくれなくても……。 「夏仍は、力持ちだから持てるよね」 隣で、軽そうな鞄を肩にかけたお母さんが、笑う。 「違うー。力持ちなんかじゃないから持ってぇ……つぶれるぅぅ」