「あら、こんにちは。小南さん」



「まぁ、佐山さんじゃない。こないだは、新鮮な苺、ありがとうね」



「いえいえ。それより、最近の──」




長いながーいお母さん達のお話が始まったので、私たちは顔を合わせる。






「どっちが足はやいか、きょーそうしよっか!せーのでいくよっ」



柚希が耳打ちする。



よぉし。夏仍と柚希の、ふたり運動会だ!





「せーのぉっ!」



私が走り出したその時。



柚希の頭を、誰かが帽子のうえからぐしゃっと掴んだ。



「ひぎっ」と、柚希の口から声が漏れる。あははっ、変な声だ。



「こぉーら、柚希。父さんをかけっこに入れないとはどういうことだぁ?」