「ユウマは……?」
聞き覚えのない名前。
さっきの、ユウマは……?
残ったのは、中身のないサブバッグと、沈んでいく黒い影。
「ほら、皆待ってる。早く帰ろう」
───ただ、この手を離したくない。私の目からは、理由もない涙が溢れる。
そうだった。
悠真は陸上が好きだから、こんなにも肌が焼けてたんだよね。
ユウマはいない──悠真は、ここにいる。
「悠真……」
「どうした?こんなに汚れて。それより、霧雨も轍も、お前を待ってるぜ?」
待ってる、って?
私が聞かないうちに、悠真が強く私の手を引いた。
メニュー