『キミの心の中が崩れて曖昧になった今、その中で、一番輝いて見える感情は、幸せなんだろ?
じゃあ、幸せというのは何なんだい?』
心のなかにまで染み着くような声は、止まることなく流れ込んでくる。
──私にとっての、幸せ……?
『佐山夏仍、キミはこの先、永遠に独りぼっちだ』
独りぼっちになる、の?
ううん、違う。
この人の、言う通りに、すれば……全てが元通りになる──元通りに、なる。
いつの間にか、皆がいた少し前の景色に、ピキピキと、ヒビが入っていく。
『誰からも頼られることはなく、友達からも見離され、やがてはいなくなる。そうだ、キミの一番大好きなオトモダチの、子も。アケミもテツもユズキもいなくなる。
それともう一人、──っ!』
耳の奥を、だんだん高くなる奇妙な声が通り抜けたときには、もう遅かった。
聞きたくない名前が、頭の中を掻き回すように、流れ続ける。



