心の奥底から、黒い感情が徐々にじわじわと、浸食していくのが分かる。
悠真も、葛藤していたんだ。
卒業すれば命は助かるのに、皆と離れること。他の人達が命を落とす代わりに、皆といる時間は長くなること。
選択が見えていたから、ああやって、その場を流したんだ。
「……離れたくない」
口から溢れた感情は、そこで留まることはなく、流れ出てくる。
「え?」
「ずっと、このままがいい……。ここで、卒業もしないまま、皆で一緒にいたい!」
朱美の肩に乗せていた手にはぐっと力がこもり、閉じた目の奥がカッと、異常なほどに熱くなる。
──駄目だ……もう、私は。
一番大切なモノが何か分からなくなったんだ。



