朱美は、もう打ち明けるしかない!という顔をして私を見る。そして……
「轍……が、好きなの」
と、一言。
静かすぎる理科室の中で、小さい朱美の声が、空気を伝って響いた。
「へ……そ、そうなんだ」
「轍とは、昔っから良く遊んでたの。小さい頃だったから、アタシが轍と一緒にいたことなんて、誰も覚えてないけど。
幼馴染みっていう関係に届きそうなぐらい、だった……」
「へぇえ」と軽く相づちを打つと、朱美はまた机に伏せた。
「だけど、ね。アタシがどんどん距離を置いてくうちに、轍とも遊ばなくなって。今では、ああやって少し話すぐらいしか、できなくなって……」
「……」
こんな話……させてもいいのかな。やっぱり話題を変えよう、と思っていたら。
「でも」と、ひときわ目立つ嬉しげな声が、朱美の口から溢れた。



