それから数日経った頃。
私は運がいいのか悪いのか、るいに全然会わなかった。
でもやっぱり好きな気持ちは強くて、気持ちをかき消すようにバイトしたり、放課後は遊んだりして過ごしていた。
「あ、松岡じゃんっ!」
帰ろうとロッカーの前で靴を履き変えていたとき、視界に影が入った。
「おー、津軽くんー!」
「おーって何だよっ!」
と爽やかに笑う津軽くん。津軽くんとは同じクラスの男の子で、一回だけ席が隣になったことがあってよく話すようになった。
ニカッと笑った時に現れる真っ白な歯が印象的。
バスケ部の爽やかランキング一位の男の子だ。
「松岡一人なの?」
「そうだよ」
「じゃあ一緒に帰ろうぜ!」
「いいよ!」
「やった」と小さくつぶやかれた津軽くんの声は、私には聞こえていなかった。



