spicy◇candy

カーテンのうち側で、俺はそっと和美にハグしていた。暑い夏をものともしないハグ。普通なら迷惑なのかもしれないが、弱っている和美に、反抗はひとつも見られなかった。

「全く……こんなんで惚れ直すと思わないでよ」

しかし彼女は、何気に幸せな顔に変化していた。素直になれよと思いながら、丸椅子から立ち上がる。和美はベッド横においてある、水を一口飲んだ。やはり水分の偉大さが、真夏は良くわかる。


風邪と熱中症のダブルパンチに、流石にこいつも耐えきれなかったみたいだな。俺は、もう1度無理をするなと声をかけ、保健室を後にするしかなかった。

流石に大会前に、いちゃついてばかりもいられないもんな。それくらい百も承知だ。マネの和美にとってもその方がいいに決まっている。