ひたすら本を読みふける彼女の隣。時の流れは不思議なもので、他人を待つのは授業と同じくらい長く感じる。

「ふぅ。おしまい」

彼女の一言に続くように俺は、なんとか言葉を放つ。緊張などしなくてもいいはずなのに、緊張しいのは転校したての立場がそれを掻き立てるせいだろう。

「そうだ…………名前を…………教えてくれ」
「倉井杏奈(クライ・アンナ)。好きに呼べば」

あっさりとした紹介をしたら、もう用済みと言わんばかりの勢いで本を鞄に突っ込み、倉井は風のように去って行った。