もちろん私も例外ではない。
生まれる前には出生前診断を受け、生まれてからは遺伝子検査を受け、15歳になったらマッチングシステムに登録され、顔を見たこともない男性との結婚を勧められた。
相手は当時18歳の百川聖也だったわけだけれど。
中学一年生の時に初めて人を好きになったけれど、その人とは決して結ばれないことは初めからわかっていた。
だってその人とは遺伝子格差があったから。
簡単にいうと、彼はガンになる可能性が高かったらしい。
『私たちの家系にそんなDNAはいらないのよ。』
好きな人のことを母親に相談すると、母はにっこり笑ってそう言った。
『灯里にはもっと優秀な人がふさわしいんだから。うちはSクラスの家系なのよ。』
諭す母の顔を見ながら、私はもう人を好きになるのはやめようと思った。
好きになったところで結ばれないのなら、叶わないのなら、こんなに無駄で辛いことはないのだから。