ねえ平助

なにー?

これ、よめる?

ん? えっなにこれどう読むの?


やっぱりか…しかも私横に書いちゃったから意味不明だよね

でも達筆には書けないのでせめて縦に書く。

わからなかったらよんであげればいっか、

メッセージも書き終わり、クッキーも生地がたくさんあったので、何回かに分けて全て焼いた。見た目はいい感じに出来たので平助に毒見させる。

どう?

うまいよこれ!すごーい!俺こんなの食べたことない!これなら沖田さん喜ぶよ

よかった〜

一人二つずつで和紙でいい感じに包んでいく。

平助にも何個か任せてみたけどプルプルと危なっかしかったので、手紙を挟むだけの係りをやらせた。

よっし!
こんなもんか!

うえええい!

出来上がりはとても可愛く出来た。

幹部以外の人のはお皿に乗せている。

ああ平助、私すごくわくわくしてきたよ!喜んでくれるかなあ

当たり前だろ!俺もすっごく今楽しい。じゃあ俺は他の奴らに配ってくるから、桜はその包まれてる方配ってきて!

わかった!

二人はドタドタと走り回りみんなに配る。

まず、近藤さんの部屋に行くとそこにはちょうどよく土方さんもいた。

近藤さん!土方さん!

あ?

ん?なんだい桜。

あの、平助とクッキーっていう甘味作ったんです。あ、といっても土方さんは甘いの苦手かなーと思ったのでちゃんと甘さ控えめです!

そういってそれぞれに包みを渡す。

おお!ありがとう桜。いやいや、さすが女の子って感じがするな!
ここは男ばかりでむさ苦しいから最高の癒しだよ。

ありがとう。
桜、こんなの作れるんだな…

土方さんと近藤さんは包みを開ける。

小さな紙がでてきた。

ん?なんだいこれは。

俺のにも入ってます。

それは私からの一言お手紙です!
でも私この時代の書き方わかんないから読めなかったらごめんなさい!

近藤さんには、いつもありがとうございます。と。

いやいや、なんとか、読めるよ。
こちらこそありがとう。

ニコッと、微笑んでくれた。

嬉しくなって今度は土方さんの方を向くと、

顔を真っ赤にしてこちらを睨んでいた。

それもそのはず。

土方さんのには、あの豊玉発句集のなかの、梅の花 を書いておいた。

読めなかったらなにか適当なことを言ってごまかそうとしていたが読めたようだ。

桜なぜこれをっ…

トシには何が書いてあったんだ?と、近藤さんが聞くので

ああ、土方さんには、土方の趣味のはぃ………

うわぁあ!やめろ!!!それよりなんで知ってるんだ!!総司か?!

違いますよお!私の時代じゃ有名で…

まで言ったところで、土方さんが立ち上がった。

やばい。追いかけられる。

私も土方さんが走り出すのと同時に走り出す。

きゃー!!!あははは!!

まてこのやろう!!

私は女です!!

クソアマァアアア!!!

追いかけっこをしてると、原田さんと永倉さんがいた。原田さんと永倉さんの周りを土方さんから逃げながら走り回り、それぞれに包みをわたす。

それ、わたしと平助で作った甘味です。よかったら食べてください!

とだけ言い残し、山南さんの部屋に駆け込む。

うわあ誰だ……

山南さんー!助けてください!

あっ敬介っ

私は山南さんの部屋で捕まった。

事情を説明し、包みを渡す。

土方さんにはどこまで知ってるのかと問い詰められ、山南さんはそれを無視して包みを開けている。

と、メッセージに気づいたらしい。
これまで皆案外読めているので、山南さんも読めるだろうと思ってると、すごく優しい笑みを浮かべてありがとう。と言ってくれた。

歳三。桜を許してあげなさいな。

おー。そろそろ勘弁してやる。

では、失礼します。と、また土方さんに捕まる前に部屋に出る。

と!山崎さんの分を忘れていた。

土方さん!これ、山崎さんに渡しといてください!

と、言って包みを投げて渡す。

おおっと土方さんはなんとかキャッチする。

それを、見届けた私は最後に総司のところに行く。

土方side

はぁ。全くあいつはいい子なのかなんなのかわかんねえな。

そう呟くと、敬介は、あの子はいい子だ。未来から来たと言っていたが、私のことも見透かしていたみたいだ。

? 俺には敬介の言っている意味がわからなかった。

じゃあこれ山崎に渡してくるわ。
邪魔したな。

敬介の部屋を後にした。

山南side

あの桜という子にはすっかり、まいった。

実は私は最近、ここに自分の存在価値を見出せないでいた。

でも、桜にはわかっていたのか、小さな紙には、
山南さんはもっと自分に自信を持ってください。 山南さんがいなくなったら皆悲しみますよ

と書かれていた。
私は別にここからいなくなろうと思っていたわけではないが、恐らくあの子は、私がここからいなくなるという未来を知っていたのだろう。

……はは。こりゃ総司も骨抜きになるわけだ。

もう少し頑張ってみるか。



桜side
すっかり忘れてたけど、これは総司のお見舞いでもあるのだ。
そのまま看病してあげようと思って、最後にしたのだ。

入りますよーー…?

返事はなかったので勝手に入っていった。

平助の言う通り布団で丸まっている。 かなり具合が悪そうだ。もっと早く来ればよかったと後悔しながらも私は言った。

大丈夫ですか? 平助から頭痛くて寝てるって聞きましたけど、、

すると
んー

といって頭まで被ってた布団から目までをちょっと出して睨んできた。

おお、確かにこの目は人を斬りかねない…

苦笑いしながら総司の横にすわり、おでこに手をあてる。

そんな睨まないでください

というと総司は目をつぶったって呟いた。

……手、冷たくてきもちい

ならよかったです。
私手が冷たいのが自慢なんですよ

総司は何もいわないから一人で続ける

…前、私、友達の首筋にそっと手を当てたんです。そしたらその子ひゃぁあ!って叫んで飛んだんですよ?ふふふっ

その友達ってモモっていう子?

ああ、ももはこっちに来てからの友達なので…
あの、あっちにいた頃の…友達です。

やばい。話のチョイスを間違った気がする。

………桜はさ、元の時代に戻りたいと思う?

うーん戻りたくないと言ったら嘘になりますけど、ここにいたいってのも本音です。

初めは戻りたかったけど、ここに置いてもらってみなさんすごく優しくて、、離れたくないなあって思っちゃったんです。

ふふっ…総司のせいでもあるんですよ?

そういって微笑む彼女は寂しさともとれるような表情だった。

桜は、ずっと僕のそばにいてくれると言っていたけど、いつか消えてしまうんじゃないかと不安になった。

あ!
突然桜が声を貼る

頭に響いたんだけど…

あの、これさっき平助と一緒に作ったんです。クッキーっていう甘味なんですけど… お見舞いに

……さっきまで平助といたのかよ
なんか心臓のあたりがズキっとする。

この子は本当に僕の心をかき乱すね。

まぁそれほどまでに僕はこの子に夢中なんだろうけど。

頭が痛いのを我慢して上半身を上げる。

寝ててください!という桜を無視してそれを受け取る。

和紙で綺麗に包まれたそれは、女の子っぽさに溢れていた。

開けていい?

そういうと彼女は笑顔で頷く。

カサっ…

開けると、小さな紙が挟まっており、汚い字で 頭大丈夫ですか?
と書かれていた。 これ桜が書いたのかな…頭大丈夫ですかって、痛みのことなんだろうけど違う意味にとれる。

ボーッとする頭でそんなことを考えながら紙を眺めてると、桜が覗き込んできた。

顔が……近い。

なんて書いてありました?これ、平助が書いたんですよ

なんだ平助が書いたのか。どうりで汚い字なわけだ。
でも、桜からじゃなかったのがちょっと残念に感じる。

よ、読めない…総司、これなんて書いてあるんです?

頭大丈夫ですか?って

ちょっ平助wwwwww
それは…wwww

桜も僕と同じ解釈をしたらしく、吹き出して笑った。

なんか喧嘩売ってるみたいですね

そういって僕の方をみた。

もともと顔が近くてやばかったのに、それに加えこっちを見たので、顔がもうそばにある。

桜もさすがに近いと思ったのか、あ、すみません…といって目をそらし、離れようとする。

それをすかさず抱きしめる。

えっちょつ…

頭に響くから静かにして

というと、桜は黙った

でも僕が何も言わないのに耐えきれなくなったのか、小さい声で話始めた。

あの、クッキー、ほかの人の分も作ったんです。で、お手紙、二人で分担して書いたんですけど総司の分、私が書きたかったのに平助に先に取られちゃったんですよ笑笑

クスクスと僕の胸の中で笑う桜。

そうだったのか…平助のやつ…

それにしても桜、平助平助って。
なんなのさ。平助の方が好きなの?

そんな僕のモヤモヤを無視して桜は続ける。

総司が取られちゃったの悔しくて、土方さんと近藤さんと一さんに書くことにしたんです。
そしたら平助、なら俺は原田さんと永倉さんに書くって…なぜか張り合いになっちゃって、結局私はその三人と山南さんに書くことになって、平助はあと山崎さんに書いたんです。

あーもう…平助平助って…
黙らせたくなった僕は桜が喋っているのを遮って

でも、私よく考えたらこの時代の書き方知らなくて…平助に見てもらったら読めないって言われたんですけど……


口を塞いだ

もちろん自分の口で。

桜は大人しくなった。
でも平助のことばかり話す口を僕で埋めたくてさらに唇を重ねる。

んっ…
そ、そう…じ…?ん……

桜からは苦しそうに息が漏れる。

僕は角度を変えて何度も食いついた。

桜の細い腕が僕を押しのけようと力を込めるが、なんともない。

桜の唇を舌でこじ開けて、中に滑り込ませる。

舌と舌が絡み合う。 桜は必死に逃げようとするがさせない。

相変わらず桜からは苦しそうな吐息が漏れる。

その声、、堪らないね

ようやく解放してあげると、まだ口と口が銀の糸でつながっていた。

桜ははぁはぁと、酸素を取り入れている。
僕の胸に頭をつけてうずくまってしまった。

何?、今の…

私、総司にき….すされて……
はあはあいいながら、恥ずかしくて下をむく。

え?なんで?どうして? 私何かしたっけ。あ、もしかして頭がボーとしてやっちゃったとか?

えっでもでも、そういえば総司に抱きしめられるの何気三回目くらいじゃない?

もしかして、総司私のこと…

私が頭の中でぐるぐる考えてると、上から総司の声がした。

……….ごめん。


それだけ言うと、私を引き離し、布団に入ってしまった。

私も何も言えなくて、失礼しましたっとだけ言って、部屋を出た。

どうしようどうしよう。

なにごめんって。なんで謝られたの?

桜ーー!

後ろから声が聞こえた。
振り返ると、

へ、平助ぇ

泣いてしまった。

わっど、どした?!また俺なんかした?!

うえええーんとなく私をオロオロしながら見ている。

どうしたらいいかわかんないよね。
ははは…