すると、幹部の中の一人が声をかけてきた。

「間者じゃないにしろ、怪しい者に変わりはない。俺はかわいい女の子を疑うなんてしたくはないが、君のことを聞かせてくれないか?」

恐らく近藤勇だろう。
局長のオーラが出ている。

「あ、そうですね!私自己紹介してませんでした!沖田先生にも平助くんにも!」

さっきの真面目な雰囲気とは逆にふざけた雰囲気になった私を見て皆は目を丸くした。

こうしてふりだねでも明るくならないと身がもたない。

「えーと、じゃあばーっと自己紹介はして行くので、何かあれば後で質問受け付けます!

まずは名前ですね!私は桜と言います! その名の通り春生まれです!
好きな食べ物は甘い物。ぜひ沖田先生と甘味屋に行きたいです!」

ニコッと笑って沖田先生を見ると、そんなに私が嫌なのか顔を背けてしまった。

うっ…心折れる。
でも負けるな自分!

「あ、あと〜、特技は楽器を吹くことです!これ!これです!」

ケースからサックスを取り出す。

「今は吹きませんが、聞きたい時は言ってください!いつでも吹きます!

以上です!」

…シーンとする。

やめてよぉ。私を滑らせないでよお。
ただでさえ慣れない男に囲まれて緊張してるのに…

ああ、泣きそう。

「….そんな楽器見たことねえよ。それに、なんで総司が甘い物好きってことを知っている。それは実は武器なんじゃねえのか?」

ああ!ありがとう!土方さん!でも土方さんさすが鬼と言われるだけあって簡単には信じないか…

でもフレンドリーに接するしか方法がわからない。、

いかにもアウェイなこの場から早く逃げたくなったが、逃げれば斬られるだろう。
仕方がない。


「こ、これが武器?!笑わせないでくださいよぉ〜!あと、私が知ってるのは沖田先生が甘党ってことだけじゃありません! ここにいる皆さんの名前も恐らくわかります。誰が誰だかはわかりませんが!あはっ」

「えっじゃあ俺は?!誰だかわかる?!」

ん?誰だこの人は。でも警戒せずに話しかけるって馬鹿なのか?!

「うーん…顔と名前が一致してるわけじゃないのでなんとも言えませんが、永倉新八さんか原田左之助さんですかね」

「「えっ!」」

2人の声が重なる。あってたかな…

「確かに俺は永倉新八の方だ!」
「そして俺は原田左之助だ!いやぁこんな美しいお嬢さんに名を呼んでもらえるとは…」

といって、手を取って手の甲にキスしてきた。

「ひゃうっ」

「えっ?!」

なぜか平助くんまで反応する。
なんでやねん。なんで顔を手で隠してるんだ!そして、目だけは指の隙間から出てるぞっ!


「…? ははは!かわいい反応だ!こんな純粋な女の子を疑うとは。土方も落ちたな」

私の顔はすごく真っ赤だろう。

土方さんの方を見ると、やはり怪しいものを見る目で見てくる。

はずしたかな。やっぱり名前とか知ってたら明らかにスパイだよなぁ

「…他の奴の名もいってみろ」

怖い怖い怖い怖い怖い

「ぇっと…
局長は近藤勇さん…。 後は、沖田先生こと沖田総司さんに、藤堂平助くん。あと…斎藤一さんに…山南敬助さん…あと…う、上にいるのが山崎丞さん….ですかね、、」

おそるおそる言うと、皆驚いていた。

「俺のことまでバレてたんか」

天井から声がする。

「す、すみません…」

「なんでそんなに僕たちの情報もってるの?やっぱり間者なんじゃないの?」

沖田先生が聞いてくる。

「違います…私は間者ではありません….」

もうやだなぁ。人に疑われるってこんなに辛いんだ…

しゅんとする私。

「だったら証拠を見せろ」

水掛け論のようなことを土方さんが言う。

未来から来たこと言うしかないのかなぁ。

できれば言いたくなかった。
これこそ信じることが出来ないだろう。

でもそれしか道はない。

「私が皆さんのことを知ってるのは、私が未来から来たからです」

「お前っそんなでたらm…「信じてもらえないのはわかってます!!」

土方さんの言葉を遮って叫ぶ。
何かがプツンと切れた。
もう涙が出そうだ。

「私が間者じゃないってことも信じてもらいないのにこんなこと信じてもらえるなんて思ってません!」

「ちょっ桜落ち着けって…」