会計を済ませ、屯所へ戻る。

「おっ!ハルと八十八来た!

どうやら俺ら待ちだったようで、ついたらすぐに出発だった。

そして角屋へとつく。

「いらっしゃいませ。こちらの大広間へどうぞ。

大人数だからか、広い部屋へと通される。

ドキドキ

芸妓の桜ってどんななんだろう…

料理が運ばれ、何人かの芸妓がやってくる。

その中に桜を探すがいない。

そんな様子に気付いたのか、

「ほらぁやっぱりこないじゃん

八十八がからかってきた。

「絶対来るし。

俺は沖田さんが桜に気付いてしまった時対応できるようすぐ隣に座っていた。

「ハル、もしかして噂の芸妓指名ですか?

ニコニコと聞いてきた。

「そんなとこです

「でももし本当に美女なら土方さんとか原田さんが本気出しちゃいますからどうなるかわかりませんよ?

あははっと笑う沖田さん。

そうなったらマズイな…

「阻止します

キリッと言うと、本気なんですね!と言った。

そして暫く経った後。

障子がスッとあき、

「お初にお目にかかります。お八重と申しんす。どうかよろしゅう

お八重…また違う人かぁ

と思いながらも芸妓が顔を上げたのを見て、ハッとなった。

そこにいたのはきれいに化粧され立派な芸妓になっていた桜だったからだ。

桜side

私が入った瞬間静かになったと思ったら今度はざわざわしだした。

なになに?!どっちの意味のそれなの?!

私はとりあえず局長らしき人のところへ行く。

「お噂は聞いておりますえ。近藤さんでっしゃろ?随分漢前やなぁ。

少し後ろへ膝をつき、お酌をする。

「いやぁ!もしかして君が噂の芸妓か?!驚いた想像以上に美しい。

がははと笑う近藤さん。

この人がハルの上司か。

「そんなことありまへんて。お上手やなぁ。

クスクス笑い、次の人へと回る。

次はおそらくこの人?

もし副長だとすれば土方歳三だ。

「あんたは土方はんであっとりますか?

なぜか私の顔をじっと見ているのでニコッと微笑むと、さらに眉間にシワが寄った。

「あんさんせっかくお綺麗な顔してはるんやから眉間のシワはとってぇな

お酌する前に土方さんの眉間に手をやり、撫でる。

すると手首をガシッと掴まれた

「へ?

「お前、今夜空いてるか?

「今夜?

「ああ。俺が買いたい。

すごく顔が近くになる。

買いたいって…

たまにそういうことを言ってくるお客さんもいたからあまり驚きはしなったが、イケメンなだけあって少し恥ずかしい

「いや、そのっ私新人なので…そちらの方はまだっ…

顔が赤くなるのがわかる。

すると土方さんはニヤッと笑った。

「その顔もいいな。安心しろ俺が手取り足取りやってやる、

耳元で囁かれ、心臓がぞわぞわした。

ダメだ!このままじゃ私のライフはゼロよ!

すると、

「土方さーん!独り占めしないでくださいよー!俺らにもお酌ー!

と、誰かの声が聞こえた。

その人を見ると、大中小いるうちの、小さい人だった。

誰だか知らないけど助かった…

「そういうわけなんで失礼します。

なんとか土方さんの手から抜け、

次に沖田さんのところへと向かった。

あの時以来だなぁ。

「失礼します

私はお酌をしようとしたが、沖田さんも土方さんのように私をじっと見ている。

「な、なにかついてますやろか

苦笑いを浮かべると。

「君、桜ちゃんだよね?

と、言った。

はぁあ?!なんで覚えてんの?!

目がバサバサ泳ぐ。

「その反応、やっぱりさくっ…

嬉々としてそこまで言ったところで私は沖田さんの口を手で押さえた。

そして耳元に口をよせる。

「静かにしてください。確かに私は桜です。

沖田さんは私の手を口から外すと、小さな声で応答してくれた。

「なんでここにいるんです? 確か九州に帰ったんじゃ…

「や、あの…その後またこちらに来まして、そしてここで働いているという…

「…ふーん?

沖田さんは隣へと目をやった。

そこにいたのはハル!!!

目がバッチリと合い、お互い多分笑顔になった。

私は沖田さんのお酌をささっと済ませ、ハルのところへと急いだ。

ハルの少し後ろへ座ると、ハルも少し下がって座り直してくれ、隣へと来た。

久しぶりだから少し恥ずかしい。

「ハル、お酒は飲む?

「飲めねえだろ。まだ17だ。

「お堅いなぁ!私付き合いで結構飲むよ。

「うっわ!不良がここに!

二人でケラケラと笑う。

「桜…

「なに?

突然笑うのを止めたハルは真剣な顔になり、目を細め薄く微笑んだ。

「すごく化けたな…馬子にもいし…

どゴッ

私のパンチがハルのお腹に入った。

さっきの表情にドキッとした気持ちを返せ!

「なんだって?

「いや、とてもお似合いで

「うんうんそれで?

私は耳に手をやり、先を促す。

「他の男に見せたくないほどです

「うんうん、それで?ってはぁ?!

私は小声で大声を出す。

「いや、だから

「言い直さなくていいよ!なにその彼氏みたいな発言!

「いいじゃんここには俺たちが双子だってこと知ってる人沖田さんしかいないよ?

そういう問題じゃ…

「はぁ。双子の兄に恥ずかしがるなんて自分がきもい。話変えよう

すると、隣に座ってたかっこいい人がハルの肩を叩いた。

「お前!もしかしてこの人と知り合いだからあんなに自信ありげだったのか?!

「わっ!八十八!

八十八というのか…

「もしかしてハルのお友達ですか?

私はニコッと八十八くんを見る。

すると顔を赤くして、

「あ、ああまあ。二人は知り合いですか?

「ぶっは!八十八めっちゃどもってんじゃん!

ハルがあははと笑った。

「ばっか!お前うるせえよ!こんな美人前にしたら誰だってどもるだろ!お前はなんだ?美男の余裕ってやつか?!

八十八くんは本当にハルと仲が良いようだった

「八十八はん。ハルと仲ようしてくれてほんまおおきにな。昔から口が悪くてアホやけどこれからも仲良くしたってな。

八十八くんの手を握り締め、下から上目遣いで微笑む。

「はひぃ!

鼻から鼻血を出して後ろへ倒れこむ八十八くん。

「ぎゃはは!八十八まじか!お前まじか!

ハルは手を叩いて爆笑だ。

そして私に向き直し、

「お前よくそんなこと覚えたな

「野菊さんにバッチリ仕込まれたからね

グッと親指を立てドヤ顔をする。

「それより八十八くんの手当てしなきゃ。

私は八十八くんの頭を持ち上げ、自分の膝に乗せる。

「うわー!八十八目ぇ覚めた瞬間また気絶するぜ

ハルは自分の袖で八十八くんの鼻血を拭う。

「それはまずい

私はハルの膝に八十八くんを移した。

「それよりいいのか?そろそろ他の人にお酌しなくて。

その言葉に周りを見てみると、私達に視線が集まっていた。

「あっ…

やっちまったと思ってると、耳元で、

「早く行きなよ。全員終わったらまたここおいで?

と、ハルが言った。

「あ、うん…

それが妙にドキドキしてしまって、うまく返事ができなかった。

ど、どうした私!

それからいろんな人へ回ってお酌をした。

一人1人とお話ししながらだったので、結構時間がかかった。

そしてさっき土方さんから助けてくれた小さい人の番に。

「あんさんさっきはおおきになぁ。うちほんま助かったんやで

お酌しながらお礼をする。

「いや、気にすんな!お八重さん困ってたしな!

ほんのり頬を染め笑った。

「頼りになるわぁ。お名前教えてもろてもよろしいどすか?

男の膝に手を乗せる。

「と、藤堂平助です…

真っ赤になって下を向いてしまった。

やばい。私色仕掛け向いてるかもしれない


その間に皆は酔っ払い自分たちだけで盛り上がり始める。

私はまたハルのところへと戻った。

すると、今度は沖田さんも一緒に話すことになった。

「ハル、桜さん。本当のこと話してくれますか?

どうやら沖田さんはいろいろ不審に思ったらしく、珍しく怖い。

私はハルと目を合わせる。

『沖田さん、今までのうちらの嘘に気付いたのかな?

『それはないだろ、せいぜい何かがおかしいって程度じゃない?

「はいそれもやめる!

「「へ?

二人で脳内で話していると、沖田さんが突然言った。

「どういう仕組みかよくわかりませんけど、あなたたち声に出さないで話してますよね

ニッコニコが今はとてつもなく恐ろしい

「なんのことですかぁ??

あっははっと笑い飛ばすも、沖田さんは冷たい笑顔を崩さない。

「「〜!!

ハルとまた目を合わせ、そして息をついた。

「わかりました。全てお話しします。
そのかわり、今日は勘弁してくれませんか? 屯所に行ってからお話しします。

ハルが言うと、沖田さんは

「わかりました。

と言った後、

「私もすみませんでした!楽しい雰囲気壊してしまって!じゃ桜さんは仕事に戻ってください

今度は本当の笑顔であははっと笑った。

私はとりあえず一安心し、ハルとまた話そうとする。

しかし

「口裏合わせの打ち合わせをされてもあれですから今日は桜さんとハルは接触禁止!