新撰組と女子高生のいろいろな話。

沖田side
今日は非番なので一人で甘味屋にきた。

土方さんも誘ったのだが、甘いものは好かんと、断られた。

もともと一人で行くつもりだったから全然気にしてないけど

いきつけの甘味屋へいき、団子とわらび餅と餡蜜を頼む。

ここは特にこの3つがおいしいと評判だ。

運ばれてきたそれらを食べていると、ふと一人の女性が目に入った。見たことない格好をしている。

怪しいと思った僕はその人の後をつけることにした。

お金を払って店を出ると、その人はのんきにプラプラと歩いている。

町の人は珍しそうに見ているが、そんなのおかまいなしと様子だ。

それにしても、あの人どっかで見たことあるような…

しばらくつけていくと、彼女は古い神社に入っていった。

ここは特に何もないので人が来ることは滅多にない。

なんでこんなとこにいるんだろう。

注意深く見てると、その人は歌を歌い始めた。

えっ

この歌……

その時、僕の頭の中で何かがぱちっとはまる音がした。

…あの人、僕がまだ江戸にいた頃、お団子をくれた人だ。

確か桜と呼ばれていた。

そして、僕の初恋の人だ。

あの日、僕は小腹がすいて町に出ていた。

でも歩いてる途中で、財布を忘れたことに気づき、来た道を試衛館に向かって戻っていると、路地裏から歌声が聞こえてきた。

プッw 下手な歌声…

歌詞や音楽は多分いいんだろうけど、歌が下手だから台無し。

どんな人が歌っているのか、声のする方へ行くと、そこにいたのは黒い髪を耳の横でお団子にした綺麗な女の人だった。

僕に気づくと、絶望的な顔をした後、手で顔を覆った。

何この人。面白い

とりあえず僕はお世辞を言ってみた。

「お姉さんお歌上手ですね」

ほんとはヘタクソだけどさ(笑)

すると女の人は心底嬉しそうに

「ほんとっ?ありがとう!この曲はね春よ来いって言うんだ!」

と言った。 この人。自分の歌唱力わかってないのかな…

「へえー」

適当に返事をする

「あ、こっち来て座らない?お団子あるよ」

「お団子っ?!」

お腹が空いていたので食いついた。

隣に座り団子を頬張る。

それから、他愛もない会話を少ししていた。

すると、手のマメに気づいたその人がなにかやってるのか、と聞いてきた。

鋭い…

剣術をやっていると言うと、女の子なのにすごいね!と言ってきた。

はぁ?僕男なんだけど

やっぱ鈍感に訂正。

そのことを言おうとすると、誰かに呼ばれて店に戻ってしまった。

その去り際に僕の頭に置かれた手と笑顔に心臓がどくんとした。

いなくなった後もずっと頭にその笑顔と手の感触が残っていて、心臓がバクバクとうるさかったのを覚えている。

それから桜さんに会いたくて何回か訪ねたが、遠目から見れるだけで話しかけたり、かけられたりはなかった。

姿を見かけるたびに桜さんのコロコロ変わる表情にさらに惹かれていった。

そのうち、試衛館の方も忙しくなってきて必要以上に行かなくなった。

ずっと見れない日が続いた。

そしてある時、僕達試衛館派に転機が訪れた。

それは幕府の守りを募集しているというもので、武士に憧れていた土方さん、近藤さんは乗り気で話を進め始めた。

僕は正直どちらでも良かったが、この2人がいなくて僕は生きていけない。

僕達は京に行くことになった。

あの人には、もう二度と会えないだろう…

淡い想い出として胸にしまい込み、僕は京に移った。

2年前のことだ。

が、実際に来てみると幕府の守りとは反対のことをしてもらうと言われ、そんなことできるか、と、いろんな人の手を借り、自分達で立ち上げたのが、壬生浪士組だ。

初めこそ疎まれてたものの、1年前の池田屋事件以来、株が上がった。

忙しく過ぎていく日々の中で桜さんのことは次第に小さくなっていった。

のに。

なのに、なんでこの人はここにいるのだろう。

本人だとわかった瞬間、今まで胸に秘めてた思いがまた溢れ出してきた。

ヘタクソな歌声。

ちょっとズレている行動。

コロコロ変わる表情。

全てがあの時と変わってなくて、嬉しくなった。

だから、あんなに大笑いしたんだ。

気分が上がって楽しくなったんだ。

でも、あっちは僕のことを覚えていない。

当たり前か。

本当に少ししか話してないし、あの人はあの頃の僕を女だと思っていた。

でも、むしろよかったかもしれない。

あっちの方が年上なので、もし子供扱いとかされたら嫌だし。