「はぁ?!明日にでも行けばいいでしょ。私の話の方が大切なんだから!」


これはまた、やっかいな。全然話が通じないタイプ。


「類、ごめん。先行ってて」


伊織は肩を竦めてみせる。放課後職員室に行かなきゃいけないって話は勿論嘘。


それを分かってるうえで『先に行ってて』ということは、『放っておいていい』と同じ意味で。


そんなこと、出来ると思ってる?


「ほら伊織も私と話したいってさ。部外者は黙ってて」


先輩は更に伊織と体を密着させ、動けないようにする。


獲物を狙うハイエナみたいだ。


無理矢理にでも振りほどけばいいのに伊織がそうしないのは、この状況が自業自得だって理解してるからで。


けど、伊織の体にどす黒い欲にまみれた腕や脚が絡みつく様を見ていられるほど、俺は我慢強くない。


「ほんと、先生に怒られちゃうんで!まじで伊織、返して欲しいんですよ」


「イヤよ!君だけで行けばいいでしょ」


「そうはいかないんですよね……って、あ!こっち誰か見てる。先生?」


「え?そ、そんなわけ」


先輩が目を逸らして腕の力を弱めた隙を見計らい、伊織を引き剥がした。


「ちょっと!伊織!」