「お前に格好いいって思われなきゃ、意味ない」


「……とにかく私じゃ、ダメだよ」


「俺は、香里が好き。少しずつでいいから、意識して欲しい」


香里は困ったように視線を逸らした。困らせたい、困らせたくない。でも意識してもらいたい。


「花火、終わっちゃったみたいだね」


言われて空を見ると、もう色鮮やかな大輪は散ってしまっていた。音楽もアナウンスも流れていない。再び暗闇に戻る。


「そろそろ帰ろう。ここにまだ残ってるの、私達だけだよ」


くるりと背を向けて早々に坂を下りようとする香里の手を掴む。香里は今、どんな顔をしているのか。


「香里。告白のこと気にして変に避けるのはナシだからな」


「む、無理でしょ。私そんなに器用じゃない」


「なんとかなるって」


「ならない」


「俺、遠慮しないから」


そう言うと、香里は遠くを見つめて『難しいね』と蚊の鳴くような小さい声で呟いた。



本当だよな。



何でこんなに、上手くいかないのか。