花火から視線を滑らせ、香里が俺の方を向いたところで。


「…………っ、ゆう」



額に一瞬、唇を落とした。そしてゆっくり、顔を離す。香里は何が起こったか分からないって表情。目をパチパチさせている。


「……え……、裕貴」



「香里」


クライマックスに向かって大きくなっていく打ち上げ花火の音、歓声、音楽がどこか遠くで鳴っているような気がする。


今は自分と香里の息遣いだけが鮮明に聞こえる。


「俺、お前のことが好きだ」


視線が絡み合う。


「お前は気づかなかったかもしれないけどさ。1年のときからずっと、好きだった」


香里のゆらゆら揺れる瞳の奥で、色んな感情が混ざり合っていて。


「……その、私は好きな人がいて」


「知ってる。それでも、伝えたかった」


香里にぐっと近づく。


「今返事しろとは言わない。でも俺がお前のこと、そういう対象としてみてるってことは、自覚して」


「……私を好きになっても、どうしようも、ないよ。もっと可愛くて美人な女の子なら学校にいっぱいいるし、気が利く良い子もいる」


「まぁ、いるだろうな」


「ゆ、裕貴こそ気づいてないっぽいけど、裕貴のこと格好いいって言ってる先輩やタメの子達もいるんだよ?」