「もらっていいの?食べちゃうよ」


しかし伊織君本人は全く気にせず、というかむしろ目を輝かせている。


「伊織にあげるために買ったんだから食べて」


「また別のやつ買ってきてあげるね」


「はは、ありがと」


まるで餌付けだ。伊織君がうさぎだとしたら、彼女達は人参スティックで興味をひいてこちらに来てもらおうとする側。


「お!伊織めっちゃいいもん持ってんじゃん。俺も食べたい」


「ちょっと、類にあげるチョコはないわよ」


隣のクラスからひょこっと現れた柚月君が伊織君のお菓子に手を出そうとした瞬間、パシッと容赦なく叩いた。


「なんだよ、いいじゃん1個くらい」


「よくないですーぅ」


「柚月のことは気にせず伊織が食べてね」


伊織君と柚月君に対する態度の差と言ったら。


柚月君はいじられキャラだから、女の子達もそういう扱い方をするんだろうけど。


「ね、類にもあげていい?」


立っている女の子達を無意識だろうが上目遣いで見上げる伊織君にダメと言える人間は、恐らくいない。


「も~しょうがないな。あげていいよ」