「あらあら~。私お邪魔みたいだから行くね」
「え、結衣?」
「ちょうど綿あめ食べたいと思ってたんだ、向こうに混ざって買ってくるから2人でいなよ」
「分かった、いってらっしゃい」
去り際に結衣は俺の肩を叩いてウィンク。ナイス、と心の中で感謝しておく。
「香里、今日は浴衣着てきたんだ」
「そうなの。去年は着なかったから今年は着ようと思って」
近くで見るほど、普段とのギャップでなかなかにやばい。
「着れたのはいいけど、やっぱり慣れてないから歩きにくいんだよね。様になってなくて恥ずかしい」
そう言って少し眉を下げて浴衣の襟や帯の位置を直す。帯ってキツそうだもんな、女子は大変だ。
「慣れるまではゆっくり歩いてようぜ。……その浴衣、似合ってるし」
「そ、そう?」
「おー。いいと思う」
素直に褒めれば分かりやすく目を泳がせて『ありがとう』と小さく呟いた。
そういう反応されると、こっちまで変に照れるからやめてくれ。
「っあ、そうだ、あれ食べようよ。唐揚げ」
香里が指差す先にあるのは、唐揚げをいくつか串刺しにして売ってる店。