『頑張ってね』と何気なく言われた言葉で今日の部活は乗りきれると思う自分は、単純だ。


「裕貴―!早く行こうぜ。準備手伝わないと」


「わり、今行く」


急いで荷物を持って真冬を足早に追いかける。


「確か今日体育館の使用が制限されてるからって、ほぼ筋トレと走り込みだったよな?俺苦手なのに……」


真冬はシャトルランとかやらされるの、あんま好きじゃないもんな。


ペナルティとしてさらに走らされることもあるから、浮かない顔をするのも頷ける。


「キツくなるのは覚悟してるけど、やるしかないっしょ」


「……裕貴、なんか楽しそう」


「楽しそう?」


「嬉しいことでもあったん?」


「いや、そんなことないよ」


本当はある。でもそれを口に出すと面倒だから、何もないフリ。


「だってニヤニヤしてるから」


「は?してねぇよ」


「してる!何でだよ教えろって。小テストが満点だったとか……も、もしや彼女できたとか!?」


真冬が食い気味で質問攻めしてくる。


「違う、何でもないっ!」


「あ!逃げた待て裕貴!!」


これ以上ニヤけた顔を見られるのが嫌で、真冬に追いつかれないように部室までの道を走った。