あいつは来るもの拒まずっつーか、誰とでもあのくらいのことはしてる。


それを分かったうえで、大半の女子は永瀬に好意を抱く。香里も、例外じゃない。


「いつまで固まってんの、早く行かないと電車乗り遅れる」


ぽん、と肩に手を置く。そうすれば、はっとしたように顔を上げた。


「ごめん、えと、駅行かないとだね」


「その通り。あっちの道から行こ」


体の向きを変えて、別ルートから駅に行くことにした。今すぐにこの場から離れないと、と思いやんわり香里の背中を押す。


けど一瞬、香里は振り返って永瀬達を視界に映した。


何故あそこにいるのは自分じゃないのか、そう言いたげな顔をして。


――――――――――――――――――



――――――――………





「なぁなぁ、夏祭りの話聞いたか?」


「夏祭りの話?なんだそれ」


業間休みの貴重な10分、机に突っ伏して寝ようと思っていたところで真冬が弾んだ声で話しかけてきた。


「夏休み中に隣の市で夏祭りあるじゃん?それ2日間開催だから、1日目は予定合うクラスの皆で遊ぼうって計画立ててるんだってさ」


「で、2日目にやる打ち上げ花火を一緒に見てくれる相手を確保しておく、と」


「ご名答!」