「あ……」
「香里?」
急に遠くを見て立ち止まった香里に合わせて自分も足を止める。
何かあるのかと同じように道の先を見ると、そこには永瀬と女子が一緒にいた。
確かあの女は隣のクラスのやつだったはず。
女が永瀬の手に指を絡ませ、そのまま抱きつく。
ここからじゃ表情はよく見えないけど、別段永瀬は慌てた様子もなくて。
いくら人通りが少ないとはいえ、よく堂々と抱きつけるな。それを受け入れてる永瀬も永瀬だ。
「香里」
呼びかけても言葉は返ってこない。そりゃ、意中の相手が他の女と恋人繋ぎしてるうえに抱き合っていればそうなる。
「香里、別の道から行こう」
わざわざ2人に近づいていく必要はない、駅に行くために絶対この道を通らなきゃいけないわけでもねぇし。
早くこの場から離れた方がいいだろ。
「……あ、……うん」
うん、と言いつつ体は縫い付つられたようにこの場から動こうとしない。
あの光景はショックだけど、永瀬はそういう奴だとも分かってるから何とも言えない気持ちになってるんだろう。



