香里が指差したのはすぐ隣にある白のマーガレット。確かにこの花も微かに匂いはあるけど、多分違う。
「もしかして、さっきまで永瀬と一緒にいた?」
今度は俺の方からぐっと距離をつめる。香里が息をのんだのが分かった。
「ううん、裕貴が教室に戻ってくるまでずっとここにいたよ」
「ふーん?」
「何で裕貴がそんなこと気にするの?今は関係ないでしょ。まだプリントの解説残ってるし」
香里からすれば本当に関係ないことで、俺が気にしてることの方がおかしいのかもしれないけど。
こっちは気が気じゃない。永瀬とどういう関係なのか。
もしかしたらもう、俺が予想してる以上の関係になってる可能性だってあるわけで。
考えれば考えるほど、対抗心がわいてくる。
「永瀬の香水の匂いが移ってることに気づかないほど、仲良くしてんのな」
「そ、れは」
視線を泳がせ、言い淀む。そんな反応したら、認めてるって言ってるようなもんだぞ。図星なのか。
「それは、何?」



