「永瀬君、今から話があって。その、一緒に教室に来てもらえませんか?」


「んー」

伊織君はちらりと私に視線を滑らせる。この女の子の様子からして、私がどうするべきかはすぐに察した。


「私、先に帰るね」


「……ごめん、森野さん」


伊織君の言葉に首を横に振って、その場を離れた。2人の姿が見えなくなったところで、歩くペースを落とす。


あの子、今から伊織君に告白するんだ。


妙にソワソワしてたし、顔も赤かったし。間違いない。


「告白か」


相手にその感情を伝えようって決心するだけでも時間が必要だし、決心してもまた実際言えるまでに時間がかかること。


相手が気持ちを受け取ってくれるかどうかもそのとき言われなきゃ分からない。


たった一言『好き』と伝えるだけなのに、すごく難しくて。


それを乗り越えられれば、かけがえのない時間を過ごせる。


ただおしゃべりするだけでも楽しいけど、たまには2人で遊園地や映画館でデートしたり。


とても、楽しんだろうな。