いつものように話しかけようと思って、すぐやめた。
よくよく見ると、伊織と顔を突き合わせるように女の子も一緒にしゃがみこんで2人して野良猫に構っていた。
あの子、伊織と同じクラスでマーガレットの世話してた、森野さん。
夏の放課後によく伊織と教室に残っていて、そこで俺もあの子のことを知った。2人は自分達に囲まれてもまったり寝ている猫が面白いのか、くすくす笑って話してる。
その時の伊織と森野さんの表情と雰囲気で、そういうことかって納得した。
きっと、伊織は森野さんのことが。
じゃあ俺の予想通りだったってわけだ。もしあのマーガレットを大切にしていた子だったら、と思っていた。
今は良い雰囲気だし、2人の邪魔をしてはいけない。別の道から帰ろうと脇道に逸れた。
「……そっか、あいつ。森野さんと」
すとん、と何かが胸に収まる。やっと伊織にも愛せる人ができたんだ。
多分もう大丈夫、前を向いて歩いて行けるだろう。



