「聞いてよ、お昼休みに超至近距離で永瀬君見ちゃったんだ~」


「せっかくならあそぼって誘えばよかったじゃん」


「んー、最近永瀬君女の子と遊ばなくなったらしいからさ、やめた」


「まあ近くで拝めるだけでも目の保養だしねえ」


チャイムが鳴り業間休みになった途端、後ろの席の女子が会話を始める。

伊織が放課後の誘いを断った当初は「あの伊織君が」と、女子は教室でも廊下でも噂話に花を咲かせていたな。

今は大分収まってきたもののちらほら会話を耳にすることは多い。


と、そこへ。


「るーい」


噂をすれば何とやら。


教室のドアから顔を出してひらりと手を振り、俺の席へ近づいてきた。さっき伊織の話をしていた女子がきゃっと短い悲鳴をあげる。

「ごめん、教科書返すのギリギリになっちゃった」


「危うく5限の数学教科書なしで挑む羽目になるとこだった」


「類ならできるでしょ」