「何で、追いかけてきたの」


伊織君は、消え入りそうな声でそう言った。


「伊織君昨日から様子変だったし、さっきも荷物持ってくるって言って帰ってこないから、心配で」


放っておいたら、どこかへ行ってしまうんじゃないかって怖くなった。


それで焦って探し回ったら屋上にいたのだ。


色んなとこ走ったせいでもうクタクタだけど、伊織君を見つけることができて本当に安心した。


「俺のことなんか、心配しなくていいよ」


「私も探そうか一瞬迷ったけど、居ても立っても居られなくなったの。しょうがないでしょっ」


こんなに声を荒げて感情のままに喋るなんて、自分らしくない。


らしくないけど衝動に任せて感情をぶつける。


「それに、伊織君だって私が平気だから放っておいてって言っても保健室まで連れていってくれたり、チョコくれたり、知らない人に絡まれてたら助けてくれたよね」


「……うん、そうだな」


「そういうの、い、意識しないようにって自分に言い聞かせても私は……些細なことでも嬉しいって思っちゃって」