伊織君は真剣で、冗談で言ってるんじゃないことくらい分かってる。


むしろ色々気にして断ってる私の方が不真面目みたいだ。伊織君は切羽詰まった表情で『早く』と訴える。


なんで、そこまで。


こうしていても埒が明かないと諦め、恐る恐る伊織君の肩に手を置いた。


「お願いします……」


「ん」


伊織君、私のことおんぶできるのかな。腕細いし逆に心配になってくる。


でも予想に反してひょいっと持ち上げられて、足が床から浮いた。


作業のために運動着だったからよかったものの、制服だったら絶対こうしなかった。まさか伊織君におぶわれる日がくるとは。


羞恥心で目を閉じて頭を下に向けつつ早く保健室に着いてくれと祈る。


周りから好奇の目で見られて伊織君のファンの子達から罵声を浴びせられつつ進むのか、と思ったけど皆準備で手一杯なのか案外そういうことはなかった。


騒がしい音が遠のいていって、静かな空間になる。保健室に近づいてる証拠だ。