「伊織君、私が片方持つよ」
意外と買った物の量が多くて、大きな袋2つ分になってしまった。
1人で持つには重いはず。
「平気。男ならこれくらい、どうってことない」
「でも」
「俺、もとから荷物持ちで来てるんだよ?」
そう言って先に店を出ていくから、私も後を追う。
「伊織君、ありがとう」
「いーえ」
いつかの日直の仕事を手伝ってもらったときのことを思い出した。
伊織君はお店に来たときと同じように自然と車道側を歩いて、重い荷物を持ってくれている。
相手が誰であってもそうしていただろう。伊織君にとっては普通なことで、特別意味はない。
純粋な優しさだ。
でも、こういう些細な優しさですら私は意識してしまう。
少し前を歩く伊織君の後ろ姿に胸の奥が軋んで、視線を逸らした。
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だんだん暑さも収まっていくにつれて、お化け屋敷も完成しつつあった。
衣装は凝ったデザインのものがほぼ出来上がっていて、装飾もメインとサブ両方細かい部分を手直しすれば飾れる状態。



