それから何となく伊織君と目を合わせられなくて、ただ商品を選んでいく。
美佳ちゃんが詳しく買ってほしいものリストを載せてくれたおかげで、思ったより早く買い物ができた。
私がお会計をしてる間、伊織君は並べられてある白いキャンバスをじっと見ていた。
その表情は前にお姉さんのことを話していたときと似ていて。
もしかしたら、キャンバスはお姉さんに関わるものだった?
画材屋さんに来るんだったら、そういうお姉さんを思い出させるものを見てしまう可能性も考えられたはず。
でも荷物持ちのために来てくれたんだとしたら。
「……ちゃん、お嬢ちゃん。ほい、領収書」
「あ、はい!ありがとうございました」
「文化祭の時期だから買いにきたんかい?」
「はい。それで絵具が足りなくて買いにきたんです」
「そうかい。頑張ってな」
店主のおじいちゃんがにっこり笑う。優しい人だなぁ。
会釈して封筒をしまってから荷物を持とうとすると。いつの間にか隣に来ていた伊織君が袋を両手に持った。



