2人で画材屋さんに入ると、キャンバスや何種類もの絵具の独特の香りが広がっていた。学校にある美術室と同じ匂いだ。


さっそく2人で絵具コーナーに進み、色を選ぶ。


「白はこれで黒は……あった」


「赤は何種類かあるけど、どれにする?」


伊織君の白い指が棚札を行ったり来たり。


「そうだなぁ。定番の赤はこの番号のやつだと思う」


棚からその赤の缶を取ろうとして――――。


「っ……、ごめん」


「俺の方こそ」


同時に缶に手を伸ばしたから、伊織君の手に触れてしまった。


慌てて引っ込めるも、触れた箇所だけチリチリと熱い。


バカみたいだ、こんな程度で意識してるの私だけなのに。


「……谷本さんから連絡きてる。買ってほしいものリスト、だって」


伊織君が携帯の画面をこちらに向ける。自分の携帯にも美佳ちゃんからのメッセージが届いていた。


「じゃあそれを選んで買っちゃおう。早く戻らないと皆待ってるよね」