「いいって、連れてっちゃいなよ。そうだなー……永瀬!香里と2人で買い出し行ってきて欲しいんだけど」
「ん?美佳ちゃんなんで伊織君!?」
「だーって他クラスの女子が永瀬を見にきてて収集つかない」
美佳ちゃんが教室の外を指差す。
確かに伊織君目当てで他クラスの子が入れ替わり見にきてるし、他の男子も作業と話に夢中で美佳ちゃんの呼びかけが耳に入ってない様子。
「永瀬、いいよね?」
「……うん。いいよ」
「ありがと。じゃあ2人で買い出し頼んだ!いってらっしゃい!」
美佳ちゃんに元気よく笑顔で見送られては何も言い返せず、伊織君と教室の外へ出た。
こういうとき、何を話題にすれば不自然じゃないかな。それとも話す必要がない?
1人でああでもないこうでもないと考えていると。
「画材屋ってここら辺にあるっけ」
「歩いて10分くらいのとこに、絵具とかキャンバスを売ってる専門店があるんだよ」
「へぇ、知らなかった」
「小さいお店だからね」
伊織君から話しかけてもらえるなんて思わなかった。
ずっと無言でいる方が変だから気を遣ってくれたのかな。



