「はいあと1本!」


「ラスト気合入れろー!」


「「「はい!」」」


試合形式での練習で、ひたすらゴールとゴールの間を往復する。残り数秒というところで裕貴先輩にボールが託された。


「いけ裕貴っ」


裕貴先輩はドリブルで相手をかわし、ボールを放つ。


入れ!とコートの端から祈るけど、ボールはむなしくリングに弾かれてしまった。


「……いつもなら絶対外さないのに」


「どうしちゃったのかしらね、不調が続いてるみたいだけど」


「やっぱり佐々木先輩もそう思います?」


「3年が抜けて自分達で引っ張っていかなきゃいけないプレッシャーかしら。それか文化祭の準備もあるし忙しいせいかも」


「裕貴先輩が、プレッシャーでこんなふうになるんでしょうか」


マネージャーたるもの1人の選手だけじゃなくて全員の様子を見て気を配らなくちゃいけない。


でも、つい裕貴先輩を目で追ってしまう。


好きな人が不調なら心配になるのが乙女心というもので。