「俺らが本気出せばこんなもんよ」


「尚央、口閉じて手を動かせ。そして伊織の方が綺麗に仕上がってるぞ」


「そうかな?」


「伊織、見せてみろよ……あ、まじだ」


尚央君が大袈裟に項垂れると、秀君と伊織君が笑う。


こんなに近くで伊織君の笑った顔を見たのは久しぶりだ。


今までは、自分から伊織君を見ないようにしてたから。そうは言っても、無意識に見ちゃうことはあったけど……。


「結衣、3人が作ってくれた草に色塗っていこう。私は緑塗ってくね」


「それなら私は黄緑色!」


床を汚さないために新聞を敷いて、ペタペタ色をつけていく。


手は動かしつつも、5人で昨日のテレビは何見ただとか他のクラスの出し物はなんだとか色々話しながら作業する。


伊織君は、どう思っているんだろう。


私と同じ班になってしまったこと。伊織君はここ最近女の子と遊ぶことをやめたと噂で聞いた。


多分原因は、私がパンドラの箱を開けてしまったから。