「分かるよ」


どれだけお前と過ごしてきたと思ってるんだ。


「ある子に、言われたんだ。伊織君は私と誰かを重ねて見てる、本当は誰を想ってるの?って。……こんなこと言われたの、初めてだったな」


伊織は枯れてしまったあの白い花を一輪指でつまんでくるくる回す。


「今まで誰もそのことに気づかなかったし、万が一気づいてたとしても言ってくる子はいなかった」


「で、お前は何て言ったんだ?」


「……そうだよって認めて、亜紀のこと、話しちゃったんだよね」


――――伊織が、亜紀のことを?


思わず目を見開く。他人に亜紀のことを話すとは予想もしてなかった。


亜紀については他人に一番触れられたくない部分のはず。


それに女の子もよくはっきりと伊織に言えたな。伊織との関係が崩れるのが嫌だから言わないでおこうって考えるだろ、普通。


「どうしてだろ、あの子の目を見てたら……言っちゃった。その日から遊ぶ気になれなくてさ」