それとなく聞いてみるかといつものように隣のクラスに足を運ぶと、『永瀬ならさっきどこかへ行った』と言われる荷物は机の上に置いたままだから帰ったわけじゃない。


ならどこに行ったんだ。


こういうとき真っ先に思い浮かぶのは女子に確保されたって可能性。


でも一緒に帰る約束をした日に何の連絡も入れないってことは伊織はしない。


となると、もしかして。


廊下の窓を開けて少し身を乗り出す。


「……ビンゴ」


ここの窓からは屋上がよく見える。そこに1人、フェンスに寄りかかってる男が。あの髪色は間違いなくあいつだ。


なんであんなところにいる?廊下を足早に歩いて屋上目指し階段をかけ上がる。


錆びた鍵を無理矢理開けてドアノブを捻った。


ぶわっと吹く風に目を細めつつも前を見ると、伊織がフェンス越しにどこか遠くを見ていて。


「伊織、1人でどうした」


呼びかけて振り向いた顔は、どこか浮かない様子。


「んー……ちょっと、ね」


掴みどころのない曖昧な返事。


「困ったことでもあった?最近女子と遊ぶの、やめたみたいだし」


「はは、類には何でもバレる」