「うん、俺が愛してるのは亜紀だけだよ」


伊織の目は本気だった。当たり前じゃないかと言わんばかりの表情で。


――――伊織の心は、とっくに壊れてしまっていたのかもしれない。


愛する人が傍にいない現実を受け入れたくなくて、でも寂しくて相手と体温を共有する。


そんなどうしようもなく不安定な世界が、伊織の全てとなった。


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そして季節は廻り、初夏を迎えたけど。


どうすれば伊織を救えるのか。相変わらず、毎日そればかり考えてる。


「伊織」


昔の純粋な笑顔が脳裏に浮かんでは消えていった。


これからも伊織は、こんな不毛なことを続けていくんだろうか。


それすらもう生活の一部となっていて仕方ない、で片づけているのかも。


「いーおり!迎えにきましたよーっと」


作り込んだキャラで放課後、伊織のクラスに顔を出す。



「あ、柚月だ。ねぇ今日暇?」


「帰りにゲーセン寄ってかね?」


「今日は予定あってさ。ごめん!」


「え~類そうやって先週もパスしたじゃん」