純粋に笑って密かに恋を楽しんでいる2人を傍で見ていられるのは、俺の幸せでもある。
もし2人に何かあれば俺が助けるんだ。そう思いながら毎日を過ごしていた、のに。
俺と伊織が中学2年の、残暑厳しい9月。音をたてて、何かが崩れ始めた。
「…………亜紀が、事故にあった?」
2、3日学校を休んでいた伊織が1時間目が終わったあと学校に来て、そう告げた。
伊織は見るからにやつれて、今にも倒れそうだ。
自分に落ち着けと何度も言い聞かせて、通りかかった担任の先生に伊織を保健室に連れて行くと言って、手を握った。
伊織は何も言わず、抵抗もしない。こんな伊織、初めて見た。
保健室の先生に事情を告げ、ベッドを貸してもらう。
「じゃあ先生、職員室に用事があるからその間よろしくね」
「はい。分かりました」
伊織をベッドに座らせて、自分は隣にあった簡易的な椅子に腰を下ろす。
「……伊織、亜紀はどうなってる?」
ドクドクドク、心臓の音が煩い。



