聞き馴染みのある声が入口の方からして見てみると、俺達と同じようにずぶぬれの亜紀がいた。
「っ亜紀!?」
俺が声をかける前に、伊織がすぐに亜紀のもとへ駆け寄っていた。
「何で傘さしてないんだよ、朝持っててたじゃん」
「あはは、貸しちゃって」
「アホ。取り敢えずこっち」
伊織は亜紀の手をとって屋根の下まで連れてくる。
「久し振りね類!こんな形で会うとは思わなかったけど」
「本当だよ。風邪引く」
「亜紀、ほらこれ」
伊織は鞄のなかから体育できた運動着を取り出す。
「え?」
「え?じゃない、今すぐ着ろ。あと類、タオル貸して」
「わ、分かった」
伊織は有無を言わさず亜紀に運動着の上着をずぼっと被せて、タオルを頭からかける。
「ジャージなんて着なくてもいいのに」
「他の男にその格好見せるわけにいかない」
伊織の言う通り、雨で濡れて透けたワイシャツのままだと色々危なかった。



