「っ類、一旦ここで休憩しない?」
公園のなかにある古びたベンチの上には申し訳程度の屋根がついている。そこで休んでから家を目指そうってことか。
「確かに走りっぱなしはキツいし、休もう」
俺と伊織は屋根の下に入ってベンチに濡れた鞄を下ろした。
「はー、疲れた。服も鞄も水吸って重いから走りにくいしさ」
伊織は眉根を寄せて苦々しい表情になる。
「教科書が濡れてないだけマシだって」
「確かに。それが1番困るよな」
Yシャツの端をギュッと絞って水を出す伊織の頭に『無駄かもしれないけど、一応』と言ってタオルを被せる。
「類、俺じゃなくて自分拭けよ」
「俺はいい。伊織より家近いし」
それに俺にとっては伊織に風邪ひかれる方が嫌だ。
髪を拭いていけば、目をつむって気持ちよさげに頬を緩める。……猫か。
これくらい拭けばいいか、とタオルをとると。
「あれ!伊織、と類じゃない!」



