(一体なんだったんだろう)






たいして面白くもない授業を上の空で聞きながらぼんやりと曇った空を眺めながら今朝のことを考えていた。





あれから教室で彼女がなにかしてくることはなかった。むしろ目すら合っていない。








(よくわからないけどなぜ彼女は僕が死にたいって思ってることを知ってるんだろ)






今まで口から出したことのない僕の思いを彼女が知ってることが不思議でならなかった。







そんなことを悶々と考えてるうちに受けるべく授業がすべて終わり帰宅部の僕は雨が降る前にさっさと帰ることにした。








最寄り駅と家の中間ほどの公園に差し掛かった時、下を向いて歩いていた僕の視界が水玉柄になり、すぐに濃いグレーになった。








(雨だ…傘ないな…中間とはいえまだ少し家まで距離あるし…やむまで雨宿りしよ…)




と、公園内の屋根のあるベンチに近づいた僕の足が目線の先の"先客"を確認した途端に動かなくなった。




(音沢…?なんで……)





「遅いよー!もー!君ってほんとは亀なの?」




「…はい?」





とりあえず屋根の下に入り立ち尽くす僕に彼女は



「さ、行くよ!」と元気よく僕の手を取り
たった今、大ぶりになった雨の中に飛び込んだ。




「はっ?!えっ?!行くってどこに?!」





「家に決まってるでしょ!早くしないと濡れるよ!」



あの…現にずぶ濡れなのですが。







意味がわからず彼女に手を取られるまま走っていると





(あれこっちって…)






「ついた!!」






彼女が止まったその目の前にある家は







「僕の家…なんで…」







何のためらいもなく僕にリュックから鍵をとりださせて家の中に入って行く彼女





「あー濡れちゃった。」



「…」




(いやいや待てよ濡れちゃったじゃないよ!ここ僕んちだしなになになんなの?!)





困惑する僕が唯一言えた言葉





「えっと…はじめまして…」





はじめましてじゃねぇ!情けない。








「とりあえず、フード付きのパーカー、貸してくれる?」



おたおたする僕は




「早く!」と急かされわけもわからず1着しかもってないフード付きパーカーを彼女に貸して自分も着替えを済ませた。






そして、今。フードを目深に被った彼女が僕の部屋でくつろぎはじめてようやく






(なんでこんなことになってるんだ…?)





今までの出来事に改めて疑問を覚えた。







「えっと…なんで僕の家しって…」






僕の質問を遮り彼女は






「これから私の秘密を見せます。」


といかにも真剣に、そして自信ありげに
目深に被ったフードをとった。







へぇ。彼女頭から猫の耳が生えてるや。
尻尾もかぁ。





「ってえぇぇ?!」







「驚いた〜?本物だよ〜?触ってみる〜?」








言葉を失った僕に上目遣いで尻尾を振ってみせる彼女。







あまりにも状況がめちゃくちゃすぎて夢なのではないかと思った僕に







「あ、もしかして夢だと思ってる?」







と言って容赦なく僕の脇腹にグーパンチがお見舞いされる。







「痛っ!!!」







ゆめじゃ、ない……何が起きてるんだろう…