落第音楽部!

勝手に推測して、私はふむふむと頷いた。

それを見て、五十嵐先輩は小さく微笑むと、カップの乗ったお盆を机に置いた。

「よろしければお茶どうぞ……それと、そのソファ気に入ったのでしたらまた余分に持ってきますね」
「いいんですか?ありがとうございま……」 
 
いや、待て待て。
今この人、さらっと、超さらーっと爆弾発言したよね!?
持ってくるって……それは追加のソファとそれを運ぶための人材とを兼ね備えている、すごい財力の持ち主とお見受けしてよろしいのでしょうか!?

興奮して私が身を乗り出すと、五十嵐先輩は躊躇いがちに苦笑した。

「ごめんなさい、少し話を盛りすぎましたね。満留さんが思っているようなことはしませんよ。友達に運んでもらうんです」
「あぁ、成る程ー……って、それもちょっと外れてません!?」

突如、私の脳内に筋肉に覆われた長身のアメリカ人が現れた。ソファを運べる友達って、こんな感じ?
どうしよ、英語とか話せない……よし、思い出せ、中学校のスピーキングテストを思いだせぇぇ……!


そうやって私がまだ見ぬアメリカ人の発音良すぎる『How are you?』に苦戦していると、灯蛇君が話に割って入ってきた。

「その友達って、榊くんでしょー?あ、満留ちゃん、榊くんっていうのね、うちの部活でトロンボーンやってる人なんだけどー」

へ?日本人?いや、ミドルネームが日本名の日系人?
しかも、うちの部活って言った?

「と、灯蛇君……榊さん、て、何者?」
「えぇ?うーん、何だろ……大物?」

う、読めない……『榊さん』、全く人物像が読めない。