早く来すぎちゃったかな。
そう思いながらも特別教室の中で城川くんを待つ。
遅いなぁ。
「急に呼び出してごめんね」
ふと思ったと同時にそんな声が聞こえてきた。
「隣の教室かな?」
その教室の前の廊下に座り込んで聞いた。
「俺は全然大丈夫だよ」
え、この声…。
少し開いているドアの隙間から覗くとそこには、顔を真っ赤にした女の子と裏の顔で接している城川くんがいた。
ど、どうして…?
「話って何かな?」
「あ、あのっ、中学の頃から翔太くんが好きだったの!あたしと付き合ってください!」
予想外の言葉に目を丸くした。
あたしが中学の頃できなかった告白をこの子がしているんだ。
今になって告白できていない自分が恥ずかしい。
「ごめんね大島。俺今、目が離せない奴がいるんだ」
え?
そんなの初耳。
「そ、そんな…」
「でもこんな俺を好きになってくれてありがとうな?」
へなへなと座り込んでしまった女の子と目線を合わせるために城川くんはしゃがんだ。
「こんなんじゃないよっ」
「わあっ」
そういって女の子が城川くんに抱きついた。
「え…」
うそでしょ。
「翔太くんは優しくてかっこいいよっ」
「お、おいっ大島っ」
「こんなにいい人は他にいないよっ」
「と、とにかく離れろって」
「あたし全部知ってるんだよ?なんで翔太くんがみんなに裏の顔で接してるか!」
「なっ…」
なんであたしより先にあの子が知ってるの?
「だって翔太くんは…」
「や、やめてっ!!」
「え?」
「これ以上、城川くんの中にづかづか入ってこないで!」
「寧々?」
「す、鈴宮…」
え?あたし…
今になってこの状況に気付く。
「お前泣いてっ…」
「え?」
泣いてないと思ってたのに必死で気付かなかったんだ。
涙がぽろぽろと流れていく。
「あれっ、なんで、だろう…」
拭いても拭いても
「止まんないっ…よ…」
「はーあもう疲れた」
女の子が口を開いた。
さっきの可愛さとは逆に腹黒さがにじみでている。
「鈴宮、あんた悲劇のヒロイン気取りなわけ?」
「そ、そんなんじゃ…」
「泣いたら済むって思ったら大間違いよっ!!」
その瞬間女の子の手が上がり叩かれると確信した。
ぶたれるっ…
そう思って頭を手でガードしたが痛みは襲ってこない。
「おい、何やってんだよ」
「し、城川くんっ」
いつも危ない時に助けてくれる。
それだけでドキドキしてしまう。
「おーお王子様の登場かよ」
「何がいいたい」
「あんたもあたしと同じなんだよ」
「お前と同じにされてたまる…」
「過去に何かあって裏の顔で接してる」
え?過去?
城川くんが下唇を噛んで悔しそうな顔をしている。
「ほら図星。あたしもそうだから」
この女の子もそうなんだ…。
「まぁもうあんたには興味ないから。じゃあね」
そういって女の子は出ていった。