それよりマスコミはもしかすると、私たちが飛び降りようとしたと思ったのかもしれない。
「あっ……、
そういうわけじゃないんだけどな〜…… 」
迫りくる恐怖から逃れようとして、屋上のフェンスから手を外すと、また下の方から声が聞こえてきた。
『おーーいっ!大丈夫かー?』
こちらをめがけて、手を左右に降っているのは、私たちの体育教師。そしてその後ろには、多分全校生徒を引き連れている。
「あのーっ、長澤杏奈がナイフ持って、こっちに来てます!助けてー!」
長澤さんのことを呼び捨てにしたことよりも、こんな勇気のいる助けを求められた自分が何より、驚いている。
先生は頭の上で丸を作り、生徒には「待ってなさい」と指示した様に見えた。
急いでいたから気づかなかったのだろう。後ろから報道陣が詰め掛けていたのは。
『ふざけんなよ。』
冷酷な顔つきでカッターを持った長澤さんが私めがけて走ってきた。
その場がスローモーションになり、私の足は動かなかった。
死を覚悟した私は、ギュッと目を閉じた。
『危なぁい!』
目を開けて広がっていた光景に私は驚きを隠せずにいた。



![【完】[短編]君の隣には彼がいるけど僕の上には君しかいない。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.787/img/book/genre1.png)