『それでも何か言うんだったら、うす汚いシンデレラ、とでもなんでも言えばいいじゃん。
少なくとも私は、努力も苦労もせずに、憎しみとズルさだけで這い上がってきた人に、幾多の努力と数々の苦労で就いた今の場所を譲るワケにはいかないから。』
なんの努力もしてなさそうに見えた人が陰では努力をしていたんだ。それに気づかなかった長澤杏奈。
流石にこれを聞いたら思いとどまってくれるだろう、そう思っていた私たちが甘かった。
『ふーん、それで?』
衝撃の言葉をこれを封切りに幕を開けた。
『私さ、謝罪とか一番嫌いなんだ。負けじゃん。努力とか苦労とか、綺麗事も意味わからない。聞いてるのが辛かった。時間が流れるのがスローモーションに感じられた。』
心ない一言を発した彼女。
『なんとでも言うよ、うす汚いシンデレラ。
あんたを社会的に抹殺するまで、ずっと言い続けるよ。』
静寂の中、出口までパタンパタンと歩く、長澤さんの足音だけがこの体育館に響いた。
振り出しに戻った感覚になった。
ここにいる誰もが呆然としていた。
ここで〝コトバ〟をかけなきゃいけないと思った。